【中学入試算数を方程式で解く】特殊算を使わない合理的な理由

中学入試問題を解くためには小学校の教科書では習わない特殊算か方程式の知識が必須です。中学受験を目指す方の多くは「特殊算をマスターしなければ」と思われるでしょう。

しかし本当にそうでしょうか。方程式で解いてはいけないのでしょうか。

特殊算と方程式の比較についてネットを調べてみると色々な意見が見られます。特殊算を推奨されている方の意見をまとめると、おおむね以下のようになります。

・算数をより本質的に理解できる。より深く算数を考える力が身につく

・いずれ方程式は習うのだから、小学生のうちにできることをやった方が良い

一方、あかつき塾では方程式を推奨しています。もちろん特殊算そのものを否定しているわけではありません。特殊算のメリットを正しく享受できる子については、特殊算で構わないと思います。

今、特殊算を学んでいて、「算数が楽しく」「成績もよく」「特殊算が持つ本来の意味をちゃんと理解できている」子は、ここで読むのをやめていただいて構いません。ぜひそのまま受験勉強を続けてください。

さて、ここからが本題です。あかつき塾が特殊算を非推奨としているのは「理解しないままに特殊算を使う」ことについてです。

特殊算あるあるですが、

・最初は簡単に感じて、算数ができるようになった気がする

・練習問題はスムーズに解けても、模試や入試レベルの問題になると太刀打ちできない

いかがでしょうか。

心当たりのある方は、ぜひ続きをお読み願います。

1.特殊算で成績があがらない2つの理由

①直観的に分かりにくい

一例をあげると濃度算があります。

濃度算は面積図を使って解きますが、このとき、縦を食塩水の重さ、横を濃度、面積を食塩の重さとして表現します。

「200gの食塩水、5パーセントに含まれる食塩の重さ」だとすると、

縦200、横5の長方形で、面積が10になるのですが、何を言っているのかわかりますか?

それに対して、方程式の場合は身近な出来事として情報を整理しながら考えていきます。

食塩水の問題は理科室での実験の様子をイメージしながら、紙面上にビーカーを用意して、水と塩を入れて食塩水を作って、混ぜて、戻して・・・・と絵をかいていきます。

方程式の基本的な解法アプローチは「まず何が書いてあるのかを図表を活用しながら整理する」ところからスタートします。

要するに「書いてある通りに読む」のです。このアプローチは、どんなに問題が複雑になったとしても変わることはありません。

繰り返しますが、方程式は理解しやすく、かつ、汎用性が高いといったメリットがあります。実に合理的です。

②暗記と反復トレーニングに陥りやすい

特殊算は、分類の仕方によって「23種類」とも「30種類以上」あるとも言われています。また、それぞれは基本的にお互いが独立しており、体系立てて整理されたフレームがあるわけでもありません。

中学入試勉強を開始した当初は、この20種類以上の解き方を暗記して、どんな問題にどの方法を用いれば良いかのパターンマッチングを繰り返し練習することになります。

そしてその反復トレーニングによって、練習問題レベルであればある程度解けるようになっていきます。

ところが模試や入試の応用的な問題は当然、パターンにあてはめるだけで解けるような問題ではありません。応用問題になると20種類以上のパターンを組み合わせ、変形させながら問題ごとに応じた調整をしなければなりません。

ここで矛盾が生じます。多くの子どもにとって、当初の段階での成功体験が逆効果となって現れてきます。特殊算はその性質上、丸暗記と反復トレーニングが必須の解法です。そのためある段階まではそこそこ点数がとれるようにもなってしまいます。マジックにかかった状態での成功体験ですね。

そしてそのまま次第に複雑化する応用問題にも「丸暗記と反復トレーニングでいける」と思ってしまうのは当然の帰結です。(子どもは悪くありません。)

偏差値60くらいの生徒でも、実はただ当てはめているだけだったというのも良く聞く話です。

特殊算を中学入試のテクニックとして学んでいると、総じて「勉強は暗記と反復トレーニングだ」と勘違いしている子が後を絶ちません。

実際、ある中受専門塾在籍生に言われたことがあるセリフです。

算数って何か考える必要あるんですか?」。

私は塾を始めて20年目になります。

算数、数学は論理的に考える頭を鍛えることにこそ本来の意義があると思ってきました。その考えは今も変わっていません。

「算数って何か考えることがあるのか」

そんな発想をする人がいることが衝撃的でした。そして、いまの中学受験がいかに歪んでいるのかを実感した出来事でもありました。

2.特殊算の本当の弊害

特殊算の本当の怖さを実感するのは、実は中学入学後です。

上記の通り、中学受験のために丸暗記と反復トレーニングで点数を稼いできた子は、数学を論理的に考える思考力が育っていません。算数の勉強=丸暗記と反復トレーニングだと思ってしまっています。数学は考える学問なんだという本来の意義から外れた成長をしてしまっています。

わたしたち同業の学習塾の先生の間では「〇〇塾出身生は厄介」というのはよく言われていることです。

むしろ中学受験未経験者のほうが、ゼロから積み上げれば良いのでスムーズに指導できます。中学受験で変な癖がついてしまっていると、まずはそれを取り去ることからスタートしなければなりません。これが本当に難しい!スイミングやピアノや珠算のように小学生時に一度体に染みついたものは大人になっても忘れません。これが裏目に出てしまうのです。国語の前島先生も、Twitterで「塾技」算数・数学・理科の著者さんもおっしゃっています。

「中学受験の解法呪縛から解き放たれないまま中高に進むと、必ず詰む。大学受験まで持たない。」

というのは、塾・予備校業界では頻繁に聞く話なのです。

3.まとめ

当塾のある塾生の話です。

中学受験専門塾に3年間通っていましたが、なかなか成績があがらず、当塾にいらっしゃいました。

どうなったと思いますか。

長くなりましたので、次のブログで書きますね。よろしければ次回もぜひお読み願います。