【小学英語から中学英語への接続②】「主観的な学び」から「客観的な学び」へ
先日もご紹介した『中学入試 英語授業の実況中継』ですが、著者の河合塾英語科守屋先生のご承諾のもと転載しました(太字部分は私の独断です)。
小中学生をお持ちのご家庭には、ご一読をお薦めします。今学校で英語がどのように進んでいるのかを知ることは、お子さんの英語学習にとって非常に重視なポイントになります。
まず「なんで英語がこんな点数なの⁈ちゃんとやってるの?覚えるだけでしょ!」のような不毛な親子げんかを避けることができます。
「小学校のときは得意だったのに、中学に入ってからわからなくなってきたみたいで…。」こんなお悩みの原因にも納得できるでしょう。
僕は「英会話」を含めた体験や経験といった【主観的な学び】の価値は高いと思っています。もちろん小さいときにはそれが学びのメインストリームですし、今は「直感的操作」が全ての主流なので、そういう時代の子どもたちは【やりながら学ぶ】ほうがとっつきやすいのもあると思っています。
ただ、特に英語に関して、幼児から全学年見ていると、この【主観的な学び】を【客観的な学び】に切り替えるポイントがほぼ「失われつつある」と感じています。
拙書『小学英語ワークブック』を書いた際に以下の記事を書きましたが、ここで触れている「英語の発音が良いのに英語が苦手」という子どもたちは、まさに【客観的な学び】への切り替えがし切れなかった例です。『小学英語ワークブック』はここへの問題意識から書いた本です。
考えてみるとこうした「切り替え」というか「ステップアップ」に伴う躓きは、算数”から“数学”への移行など様々な科目で登場するものですが、英語はこれが大学入試準備段階まで意識されにくいようです。
私は民間資格試験の意義もあると思っていますので、あまり批判的にはなりたくないですが、上記の原因の1つには英検2級くらいまでの生徒にとって身近な英語力判定が【主観的な学び】の延長線上で「なんとなく受かる」作りになってしまっていることもあると思います。それは学習者にとってメリットもありますが、【学びのバージョンアップ】の機会が得られにくいというデメリットにもなります。
ご存知の通り、英文法学習は悪者にされがちですが、こうした学習は英語を「ことば」として「相対化する」、つまり【客観的な学び】に接続するきっかけになってもいます。その機会が減少してしまうことはあまり良いことだとは思いません。
繰り返しますが、体験/経験による学びは大切です。でも、それだけではダメなんです。主観的な学びも客観的な学びもどちらも必要です。少なくとも難関大学入試は「そういう言語力」を変わらず求め続けています。
今回『中学入試 英語授業の実況中継』を書くにあたって多くの中学入試英語問題を分析しましたが、大雑把には、【主観的な学び】で対応できるものと【客観的な学び】を求めるものに分けることができました。私が執筆にあたってメインに据えたのは後者の問題群です。前者については素晴らしい本や教材が既に世に出ています。
ただ、中学・高校での英語学習(客観的な学びはもちろんあります。ただ、従来より「溶け込んでいる」印象です)、そして大学入試を見据え、こうした中学入試英語の「要請」に真っ向から応える本にしたかったのです。そのことを感じてくださった方からの声が届いてきており、本当にありがたいです。
気付いた方もいらっしゃるかもしれないのですが、本書の構成、センター試験英語の構成に激似なんですよね。組み上げていったらそうなっただけなのですが、センター試験英語が解かせることで英語学習を支援していこうとする作りになっていたことを思えば、必然なのかもしれません。
そんなわけで、新刊『中学入試 英語授業の実況中継』はそうした「学びのバージョンアップ」をも目指した1冊です。この本が、中学入試英語対策はもちろん、英語をこれからも学び続けていく子どもたちとそれに寄り添う指導者や保護者の皆さんにとって1つの補助になるとよいな、と思います。
(引用終わり)
いかがでしたか。
今の英語教育は危うさを大いにはらんでいるのです。「話せない日本人」と揶揄されたり自嘲したりと、話せないことをコンプレックスに感じる風潮になってから久しいですね。
しかし、今後はさらに「読めない、書けない、聴けない、話せない」日本人が増えるでしょう。4技能の習得どころか、1技能も身につかない恐れがあります。今回の英語教科書改訂は失敗と言わざるを得ません。
ただし「改訂教科書の何がおかしいのか」、これに注意しながら勉強すれば、いいとこ取りをするのも可能です。よき伴走者が必要です。
当塾では改定教科書に沿いながらも、完全にそれに飲まれてしまわないよう注意を払っています。
例えば【主観的学び】に溶け込んでしまっている【客観的学び】の部分を浮き彫りにし、曖昧さを回避するよう努めています。高校生になってから「品詞や文型なんて初めて聞いた!」とならないためにも、最初が肝心です。
そうすることで、大学入試、特に国公立大2次試験に対応できる英語の土台を作れます。雰囲気だけの「なんちゃって英語」ではだめなのです。
この議論をすると熱くなるので、今日はこのへんにしますね。
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